クラフトファーができるまで。(3)【丸編み工程】

暦では立夏が過ぎ、春の日差しから夏に季節がうつろう気配がしていますね。

GWの連休はゆっくり過ごせましたか?

和歌山県の人気観光地、白浜では5月3日に本州最速の海開きとなりました。

話がそれましたが、引き続きトピックスで連載中のクラフトファー(フェイクファー、エコファー)が生地にな

るまでの工程をお伝えしています。

 

おおまかな工程として以下の順に生地を作っていきます。

1.原糸の染色

2.糸繰り(かせ繰り、コーンアップ、糸巻き) 

3.丸編み工程

4.テンターと呼ばれる生地の延伸工程、糊付工程を経て毛割り・シャーリング

5.生地へのプリント(後染め、柄物の場合)

 

 

前回は「糸繰り(かせ繰り、コーンアップ、糸巻き)」を脇田さんにお話を聞かせていただきました。

自宅の横の倉庫で地元の方々が作業しているのは、地場産業ならではの景色で驚いた方も多いのでは

ないでしょうか?

第3回目の今回は「丸編み工程」をご紹介いたします。

ベテラン職人

 

この工程を長年担当してくださっているのが、辻本さんです。

なんと辻本さんが高野口パイル(メリヤス)と関わりがはじまったのは、18歳!

親戚の家でセーター(ニット)を習い、20歳頃には自宅に大きなメリヤス機を購入。

そのメリヤス機のなかには珍しい「柄」が出てくるものもあったそうです。

辻本さんのお父さんは農業をされていたのですが、息子である辻本さんと同じようにメリヤス機を

習っていたというほど当時のパイル産業の盛んさが話の節々に感じられます。

現在もその名残として、高野口駅にはかつて旅館だった「旧葛城館」という木造4階建ての歴史的建物が残っています。

社長と辻本さんの出会い

 

中野メリヤス工業と辻本さんとの出会いは、辻本さんが30歳くらいの頃に社長から声をかけました。

面識はなかったのですが、辻本さんは機械の調整でメキシコまで行くような貴重な職人で、どうしても

一緒に働きたいという想いで何度も何度も通い詰めました。

最終的に辻本さんが社長のパイルにかける熱い想いに賛同し、現在に至ります。

当時も優秀な職人や技術は取り合いだったので、その名残でドア前には「立入禁止」「のぞくな、見るな!」とい

う文字が残されています。

 

 

今でこそ現場の写真や情報をトピックスでお伝えすることができますが、門外不出だった時代だと

考えられないことです。

私たちはこの情報をトピックスにすることで、少しでも多くの方にクラフトファー(フェイクファー、エコファー)

や高野口パイルについて興味を持ってもらえればと、筆を進めています。

(実際には筆ではなく、パソコンに向かってカタカタしていますが…。)

丸編み工程

 

毎回のことながら、レトロな機械(編機)の登場。

このヴィンテージ感がたまらない。という方も多いのではないでしょうか?

そして、何度もしつこいようですが世界的にも数が少ないであろう代物は現役のメリヤス機なのです。

この機械と辻本さんの熟練すぎる技により、糸からクラフトファー(フェイクファー、エコファー)の元となる

生地が、まあるく筒状に編まれていきます。

ちなみに戦前はモーターというものがないので、手でハンドルを回していたそうです。

 

 

ポリエステルとアクリルの糸が裏糸と合わせて機械によって高速で編まれ、通称「包丁」と呼ばれるナイフのよ

うな部分で糸をカットし下から生地が出てきます。

機械を操作しパイルの長さを7〜4ミリくらいに長さ調節するのも職人の技が光りますね。

 

 

剣山のような部分が生地をうまくひっかけることで下へと生地が引っ張られるという仕組み。

当たり前ですがカラクリのような機械の一つ一つに役割があって、それを微調整しながら作られているので

デジタルのようで半分アナログのようなものです。

 

 

この落書きのようなメモが辻本さんのデータベース。

私が見てもわからない、きっと誰が見ても解読不可。

でも辻本さんはこの紙でデータを判別し微調整しながら生地を仕上げるから本当にすごい。

しかも、メリヤスというのは厄介で季節、温度、湿度によって長さが変わってしまうので熟練の技がないと

一反(20m〜30m等)に仕上げることはできない繊細な生地です。

 

 

バルキー(ふくらみ)を確認しながら長さに関係してくる編みの細かさを調整していきます。

クラフトファー(フェイクファー、エコファー)の風合いも、網目のどこにパイルを埋め込むか。だったり

どれくらい打ち込みをするかで変わってきます。

ちなみに、モノにもよりますが一反でだいたい4kgの糸を4つ使っています。

 

 

編みあがった生地の先端は、まだまだ「糸」という感じ。

まあるく筒状になった生地は、最後の仕上げで熟練の技でカットします。

次の工程で動物の毛のような風合いをプラスすることで、やっとクラフトファー(フェイクファー、エコファー)

が完成するのです。

また弊社、中野メリヤス工業では国内でも生産しているのが少ない「シールスライス」と呼ばれる専用の丸編み

で生産することを指し、生産性は高くないですがハイパイルに比べ毛が抜けにくいというのが他者との差別化になっております。

余談ですが「シール」というのは、あざらしの毛並みのことです。

 

 

左が編みあがった生地で、右が次の工程が終わって完成した生地。

次回でクラフトファー(フェイクファー、エコファー)が完成です!

辻本さん、お忙しいなか撮影とインタビューの時間をいただきありがとうございました。

 

 

ふと、辻本さんに今までで一番忙しかった時期はいつだったかなと聞いてみると、毛皮が安く出回る前

(約20年ほど前)あの頃は、休む時間すら惜しかった。と少し遠い目をしながら思い出している様子の

辻本さんの横顔はなんとなくキラキラしていました。

その後は中国で毛皮になる動物の養殖が増えたことにより比較的安価に毛皮が流通し、少しずつ需要が下がりつつ

も品質で高野口パイルを選んでくださる企業の方々や一般の購入者の皆様に支えられてきました。

そして今、毛皮についての考え方が変わり再びクラフトファー(フェイクファー、エコファー)に

注目が集まっていることは非常に嬉しい流れで、もっと沢山の方々に知ってもらえるよう日々試行錯誤

しております。

 

莫大小とは

 

ところで「莫大小」この3文字の漢字、読めますか?

実は「メリヤス」と読むんです。

メリヤスと入力してみると変換されますよ。

編み物機械で編んだ布地の総称となります。一般的には丸編みの製品以外にもジャージー素材、靴下、肌着等の製

品の事を指し、ファッション用語として服飾の専門学校に行っていたりすると習っているかもしれないですね。

古い昔の呼び方なので、ほとんどの方が読めないかなと思います。

洋服のタグなんかに、稀ですが「〇〇莫大小」と書いてあったりするので是非探してみてくださいね。

ということで、今回は豆知識もお伝えしました。

ついに次回は仕上げの作業。お楽しみに!