市場は創造する!佐藤繊維の代表、佐藤正樹さんの講演会
苦境を乗り越え、情熱と挑戦を続ける山形の紡績・ニットメーカー
山形から佐藤繊維株式会社4代目社長、佐藤 正樹さん(以下、佐藤さん)が講演会でわざわざ足を
運んでくれました。
佐藤繊維さんといえば、ご存知の方も多いかも知れませんが米国のバラク・オバマ元大統領の夫人、ミッシェルさん
が着用したニ○・リッチのモヘアカーディガンの糸を開発した会社としても有名。
その他にも沢山の偉業があるのですが、とにかく目がいってしまうのが佐藤さんの金髪ヘアー。
これも実は佐藤さんの戦略なのですから脱帽です。
金髪にした理由は、ショップチャンネルをはじめた頃は無名の企業だったのでより多くの人に見て覚えてもらう
為に自らをブランディング。今ではトレードマークとなって気軽に声をかけてもらえる!と教えてくれました。
中野メリヤス工業のクラフトファー(フェイクファー、エコファー)にも佐藤繊維さんの糸が多く使われています。
そのご縁があって10年ぶりに高野口に来てくれました。
本当に遠いところから、ありがとうございました。
佐藤繊維株式会社とは
佐藤さんの曽祖父が山形県寒河江市で1932年(昭和7年)に創業した紡績会社をルーツとする紡績・ニットメーカーで、今や世界が認める「メイド・イン・ヤマガタ」といっても過言ではないほど。
国内外の高級ブランドと取引できたのも、それまでの様々な壁を乗り越えて、情熱を注いで糸と向き合い、真剣
に取り組んできたからこその結果だと教えてくれました。
ニットの自社ブランドのプロダクト、M.&KYOKO 、FUGA FUGA、991などはOEM、ODMの研究開発、企画、製造までひっくるめ全て国内で行っているそうです。
その他にも2015年には、地元である寒河江と世界をつなぐインターセクションGEAをオープン。
自社製品だけでなく、山形の食材を使ったレストランやグロッサリー、国内外問わずバイヤーが集めたライフスタイルを彩るアイテムが築100年以上の2棟の石蔵をリノベーションした空間に揃っています。
衣・食・住が満たされて心が「整える」場所は人気の観光スポットにもなっているということで、とても気になりますね。
山形に旅行に行く際は必ず寄りたいと思います。
世界のファッションの「素」を作っている
会場はJR高野口駅の裏側「紀州繊維センター」
今回の講演会は高野口パイルの企業も参加し、大阪からは服飾の専門学校の生徒の方々も来られていました。
内容の全てをお伝えすることができませんが、佐藤さんが約30年前に家業を継ぐために山形に戻ったところから今までの苦労や努力に至るまで詳細に熱く語ってくれました。
「世界のファッションの素を作っている」この言葉に感銘を受けたのは佐藤さんが初のヨーロッパ視察で
イタリア、フィレンツェに訪れた際にとある場所の工場長から言われた言葉だそうです。
日本では売れるもの、ニーズに合わせて作っていたのですが考え方が根本的に真逆で自らで考えて
機械を改造し新しい糸やニットを創り出す。それだけなく、展示会の演出も奇抜で魅力的!
ワインボトルに巻きつけた展示や、まるで工業用ではないような編み地のサンプルの数々を目の当たりにし、
佐藤さんはニットの面白さと可能性を見た。と言います。
糸を作るだけではない、日本に一番足りないものがそこにはあった。この気付きから佐藤さんの人生と
取り巻く世界はどんどん変化していきました。
大切なことは売れそうなものを作るのではなく、作りたいものを情熱を持って作る。
でも、現代では「良いもの」を作ること以上にもっと大事なことが、
「良いもの」の「こだわりや良さ」をどうやって伝えるのか?
特に日本の地場産業が弱いところは、モノで戦おうとする。と聞いた時に、少しドキッとしました。
「きっと分かってくれる。」と思いものづくりをしていますが「伝える」ことがいかに大切か、再度胸に刻みました。
大量生産の時代が終わった今、自分たちでお客様を生み出していかないといけない。
「つくる」ということをブランディングし「想い・ストーリー・こだわり」の見せ方を工夫することで
興味を持って、手に取ってもらえる。
言葉ひとつひとつに重みを感じながらも、佐藤さんが面白く噛み砕いて話してくれるので聞き入ってしましました。
あっという間に時間は過ぎて、公演後は奈良のご当地グルメでもある柿の葉寿司を食べながら談笑タイム。
人生のターニングポイントになったイタリア視察のお話や、山形の地元愛からはじまる地域活性への取り組みに
ついても深掘りして教えてくれたりと盛り沢山な時間を過ごしました。
余談ですが、佐藤さんがパッケージデザインした【煎餅工房さがえ屋】さん人気商品の「やみつきしみかりせん」にフロマージュ(チーズ)をディップして食べる「やまがたマリアージュ」が美味しそうで堪らない。
山形の異業種3社がコラボして商品を生み出したりと精力的に活動している姿にパワーをいただきました。
佐藤さん、心に響く講演会をありがとうございました。
山形県寒河江市で生産業が盛んだった頃には約480社ほどあった組合の企業が、今は20社だそうです。
この現状は高野口パイルだけでなく日本全国の産業が踏ん張っていることでしょう。
価値のあるものを創造し未来へと紡ぎ、意味のある産業として心新たに取り組んでいこう。
柿の葉寿司の美味しさの余韻に浸りながら、未来への構想に浸るのでした。